III−V族化合物半導体では,ふつうV族元素の蒸気圧が高いので,結晶成長時にはV族元素の蒸気圧を印加するなどして組成をストイキオメトリに近づけます.この手法は,さらにII−VI族やIV−VI族化合物半導体へも応用されています.
最適な蒸気圧を印加しながら液相成長を行なうことで低欠陥密度の結晶が得られます.
材料 |
蒸気圧制御する元素 |
主な用途 |
GaAs
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As |
タンネット・ダイオード,赤外線LD |
GaP
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P |
LED,ラマン・レーザ増幅器 |
InP |
P |
赤外線LD |
ZnSe |
Se |
青色LED,LD |
PbTe |
Te(*Pb) |
遠赤外線LD |
*PbTeではバルク成長時にPb蒸気圧を印加することでn形結晶が得られます.
■ストイキオメトリ制御の効果 ——GaPを例にして——
左 GaPエピタキシャル成長層のPL測定の結果.ストイキオメトリ制御により,650 nm 付近に現われていた深い準位は消失し,530 nm付近の励起子発光の強度は増加した. 右 蒸気圧制御によってはじめて実現したNを添加しないGaPの高輝度緑色LED(波長〜555 nm)